塔婆


梵語ストゥーパの当て字で、正式には卒塔婆・卒都婆と音写する。方墳、円塚、滅悪生善処、廟などと訳す。
死者の追善供養のために墓の後に立てるものである。

ストゥーパとは

釈尊が入滅されたとき、そのお骨つまり仏舎利が八分されて八塔が建立された。つまり舎利をおさめた霊域を表し、また供養や報恩のために高く築きあげた建造物を指す。
釈尊の入滅以後、起塔供養が盛んに行われ、インドの阿育王はその領内に八万四千の塔を建てたといわれる。
中国では建築素材や様式の変化によって木造に変わり、一重から十三重にいたる種々の塔が作られるようになった。
日本では蘇我馬子が立てたのが始まりで、それ以後日本各地で様々なタイプの塔が建てられた。高野山の多宝塔、比叡山の相輪塔が有名である。
塔婆では、泥塔、無縫塔、五輪板塔婆、角塔婆、板塔婆、笠塔婆、宝篋印塔【ほうきょういんとう】など数種類ある。

塔婆を何故使うか

お墓参り等に使われる大小さまざまな板のこと。これを板塔婆という。
板塔婆は、宇宙全体を表す五大(空風火水地)をかたどった五輪塔を省略したもので、表面上方には悉曇梵字で五大を表す「キャ・カ・ラ・ヴァ・ア」という種子【しゅうじ】(シンボル)が記されている。
『無量寿経』には「起立塔像」をすると功徳があるといい、この種子を記すことによって、植物の種から芽が出るようにいろいろな功徳が生ずると言われている。
この下に自分の頼みとする仏である阿弥陀如来の種子「キリーク」などを記し、「経に曰く」と教典の一節を引用してから「為〜〜〜追善菩提供養塔也」としたためる。現在では教典の一節の引用と「供養塔也」を省略しているのが多い。
水塔婆といって、もっとも簡略化した板塔婆を「経木【きょうぎ】」という。これはもともとお経の一節を記して川に流し、水死人や魚の菩提を弔うところからつけられた言葉である。
板塔婆の裏には同じく悉曇梵字で「ヴァン」という金剛界大日如来の種子が記される。これは仏の智慧の水で浄める意味を持っている。そしてその下に塔婆を立てた年月日や施主の名前を入れる。
また、悉曇梵字の代わりに、表に「南無阿弥陀仏」、うらに「入一法句」と記すことがある。すべての功徳はこの中に修められているということで、すべての功徳はこの中におさめられているということで、仏への便りである板塔婆を真心をこめて捧げるという、ちょうど手紙の「敬具」にあたるようなものである。
こうした板塔婆は、年回供養や、盆、施餓鬼、彼岸といった仏日にしたため、墓前で読経回向をする。

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